世紀末の歌11

LOVE


俺は…愛に一番近い感情レベルは憎しみだと思う。
お前は誰かを憎んだことがあるか。


いやそれは…


教会から去った婚約者を恨んだだろ、今でもそうか。


いえ、いまはもう…


恨んだが、憎んだわけじゃないからだ。


ええ…


もしも憎んだとしたら、今でも忘れないだろう。


忘れたわけじゃありませんよ。


しかし次第に薄れてはきた…


だっていつまでも…
あの人はそうなんですか。死んだ恋人をいつまでも忘れられないために
そのために憎んでるんですか。


もしそうだとしたらこれ以上の不幸はないだろう。
しかし、資格はある。愛し、愛される資格のある女だ。


…犬を飼う女は情が深い。
猫は誰でも飼える、けど犬は大変だ…
ワンワンキャンキャン愛情を欲しがるからな…


…海より山が好きな女のほうがいい
海は母性の象徴だ。男が向かうもので女が向かったら母性の無い証拠だ。
山や森の中で自分だけの泉を作れる女がいい。


自分だけの泉…それが家庭ですか。


…鏡は愛の敵と言えるだろう。自己愛を増幅するからだ。


自分を好きな人間は他人も愛せると、よく道徳の時間でいいますよ。


表面的にはそうだろう…しかし、本質は違う。


自分を愛し過ぎると、他人を愛さない。


すべて雲の照り返しのように、したことを返せと要求するようになる。
自分を愛するが故に、いつも不平や不満がある。


…恋を何度も繰り返すだけですね。


…恋と言うと聞こえはいいが、性的な吸引に過ぎない。
無論、入り口が動物である以上、DNAのアンテナには逆らえない。
入り口がまずそこにあるのは仕方がない。


…時の流れに負けてしまう。


そうだ、愛とは、熟練の鍛冶屋が打つ名刀のようなものだ。
相手を変えてつくれるものじゃない。


…一人の人と喜び、怒り、悲しみ、そして楽しむときの大いなる流れ。


しかし、結婚していたずらに時が過ぎれば辿り着けるというもんじゃない。


既婚女性の七割は、仮に生まれ変わったら別の男性と暮らしたいと言うデータがあるそうです。


…心貧しき女だからだ。
嫌なら別れれば良いのに、子供や生活などを重視する。


子供を重視するのはいけませんか。


夫や妻よりも子供だというのは、逃避に過ぎない。
愛の無い明らかな証拠だろう。


相手が死に生活に困れば、あるいは孤独に耐えられず、再婚する。


鏡をたくさんみる人間に多いはずだ。


人間よ、自分と他人との区別を止めよ。
親が子供を叱るのに、自分の子供も他人の子供も関係無い。
手を差し伸べる若者に、年寄り扱いするなと怒る老人たちは悲しい生き物だ。
愛とは極限であり、ほとんどの人間が手に入れられずに死んでいく。
俺もまた…


そんなことないですよ。教授は待ってる女の人がいたじゃないですか。


それすら突き詰めると愛と呼べるのかわからない。


…ひねくれすぎですよ。


愛と呼べば、そこから逃げ出した自分がやはり哀れだからだ。
愛する人がいて、食べるものがあり、眠る場所がある。
これだけで……幸福が得られるはずなのに…


…誰もが愛し愛されることに辿り着かない…
恋を繰り返し、魂を汚し、自己愛に帰結する…!
自分を守るために他人を悪く言い、傷つけ、いつも被害者意識があり、
その総意として戦争を起こす。


…教授…もう止めて下さい。


愛はあるのか…!存在するのか…!
ノア、見えるか、愛の形が見えるか。
俺は捧げる言葉を見つけたぞ。


愛とは…………互いの愛を確かめ合うための、冒険である。



ハローベイビー
愛って風船の形をしてるんだ
プーっと息を吹き込んで
苦しくなったら交替しよう
割れないようにキュッっと結ぼう
赤 青 黄色それぞれに
色鮮やかな愛が上がるよ
時には風に流されよう
時には雨にうたれよう
いつか降りゆく場所さえも
僕と君は一緒なんだね