世紀末の詩2


パンドラの箱


人間はとてもまぶしい瞬間に、とても大事なものを見失う。


所有欲の始まりだ。
金銭欲、名誉欲、欲と名のつくほとんどすべてが見えるものだ。
彼女はそれを見ずに済んでいたんだ、だから恐ろしく透明だった。
人間の欲には際限がない、特にあれだけの美貌を持っていることを知ればな。


良い夢をみたと思って諦めますって、そう言って笑ってました。


けれど俺の言う通りだっただろ。
手術なんてやめときゃよかったんだ。
余計なものがみえるようになったから。


いけないことでしょうか?
愛する彼女の目が見えるようになって欲しい。
自分と同じ景色が見せたい。そう思うのはいけないことでしょうか。


現にそれと引き換えに、愛を失った。


人間は、見てはいけないものがあるんです。
互いに恋をしあうことはある。
しかし愛し合うのは……難しい。


例えば結婚した夫婦をご覧なさい。
恋をして結婚したかもしれない。
しかし、いつしか熱は冷め、家族になったから愛に変わったと思う。
思う!ただ思うだけだ。誰もが突き詰めない。
日々の暮らしの中に埋没して…もう面倒で…あるいは本質的に怖くてか。
誰も愛があるのか確かめたりはしないものです。
そしてときどき確かめる人間がいるとすれば、必ず、絶望するんです。
その純粋さ故に確かめ、愛などなかったと絶望する。


そんなことはない!!


パンドラの箱の最後には希望が残されたという。
何故愛ではなく希望なんだ。


愛など無いって言うんですか…この世の中に愛などないって…
あるといえ…愛はあると言え…!お願いです…言って下さい…


ハローベイビー
僕はいつも不思議だね
人は見えるものを欲しがるんだ
いずれ自分は消えていくのに